責任あるラグジュアリー業界に必要な5つの課題
コルベール委員会(フランスに拠点を置く大手高級ブランドの協会)の新会長ローラン・ボワヨ(ヘネシーの社長兼CEO)は、ラグジュアリーの目的は「保存、発展、次世代への継承」であると語りました。ラグジュアリー業界が何ができるのか、何をすべきなのかをお伝えします。
1. はじめに
フランスのハイブランド企業は、ESG、環境問題の解決のために協会を組織化し対策を行っています。
コルベール委員会メンバー、高級ファッション企業幹部、業界専門家40人以上へのインタビューを経て、企業が社会的・環境的責任を果たすために克服すべき5つの課題と機会を浮き彫りにしました。
1 資源と生産
ブランドビジネスの中核となる優れた専門知識から、サプライチェーン全体にわたる責任まで考慮し、業界は資源の持続性を重視し、資源の不足と厳格な品質基準を維持の両立へのイノベーションを加速させなければなりません。
2 ライフサイクル
ラグジュアリー製品は、気候変動が深刻な影響を及ぼす時代において、スタイルの寿命、中古市場、修理の機会、アップサイクルなどのライフサイクルの問題が、業界のビジネスモデルに与える影響を考慮しなければなりません。
3 顧客との関係
ラグジュアリー業界は、新たなデジタル的体験を実現する、強固で顧客を魅了するオムニチャネル戦略の採用に努めなければなりません。
4 責任
ラグジュアリーブランドは、環境・社会・ガバナンス(ESG)イニシアチブへのアプローチを業界内外で協力し、持続的な影響を及ぼす必要があります。
5 グローバリゼーション
ラグジュアリー業界には、昨今の地政学的な依存関係の変化、グローバル化など新たなリスクを予見するさまざまな課題が山積しています。
こうした環境の変化、社会課題が、ラグジュアリー産業へ大胆な変革を求め、世界中にポジティブなインパクトを与えることを求めています。
この課題と機会が通じてハイブランドプレイヤー業界だけでなく、ミドルブランドやファストファッション業界の行動指針を考えるきっかけになると幸いです。
今回はボストンコンサルティングのブログからご紹介します。記事は短く要約して翻訳しました。詳細はオリジナルの記事をご覧下さい。
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“How Luxury Companies Can Advance as Responsible Pioneers | BCG.” BCG Global, www.bcg.com, 3 Aug. 2022, https://www.bcg.com/publications/2022/luxury-outlook-advancing-responsible-pioneer.
2. ラグジュアリー企業が責任あるパイオニアとして前進するために(原題)
近年、ラグジュアリー業界は危機に耐え、克服する力を発揮しています。
ラグジュアリー業界の市場は、コロナ禍以前の2022年から2026年には6%の収益成長になると予測されています。
消費者は、ラグジュアリー企業が社会的、環境的な進歩に責任があると考えています。ファストファッションはポリエステルなどの安く加工しやすい素材を使うことでコストを下げ、大量に同じプロダクトを製造しています。結果、古着の下取り価値が少ないためリサイクルは進まず、資源の廃棄が進みます。
一方、ハイブランドは、高価なので大切に保存され、古着屋に売却されても価格が低減しにくいなど、リサイクルが進みやすい環境があります。
コルベール委員会(フランスに拠点を置く大手高級ブランドの協会)の新会長ローラン・ボワヨ(ヘネシーの社長兼CEO)は、ラグジュアリーの目的は「保存、発展、次世代への継承」であると語りました。
(彼のYouTubeと協会のメンバーリストをこの記事に付け加えました。)
消費者の期待の変化は、彼らがさらに多くを求めていることを示唆しています。
例えば、消費者の6割が購買の意思決定にサステナビリティを考慮していると回答しています。ラグジュアリー業界のより広範なESGの変革を担当すべきであると考えます。
また約8割が、ラグジュアリー企業は、修理やアップサイクル、中古品のサービスを提供することで、生産や販売以外の責任を果たす必要があると考えています。
業界としての成功や、顧客とのつながりといった特性を考慮すれば、この業界はより広範にESG、環境問題の解決なムーブメントの推進に貢献できるはずです。
ラグジュアリー・プレーヤー、ラグジュアリー企業は、その人気や優位性をもって、よりユニークでかつインパクトある対応が求められています。
フランスのラグジュアリーブランドは、その世界的な人気から、優位に立つことができる立場にあります。
3. ラグジュアリーには、ESGの変革をリードする責任がある
コルベール委員会(フランスに拠点を置く大手高級ブランドの協会)の新会長ローラン・ボワヨ(ヘネシーの社長兼CEO)は、、ラグジュアリーブランドが持続的な影響をもたらすために、環境、社会、ガバナンス(ESG)イニシアチブへのアプローチにおいて、ブランド間および業界を超えていかに協力する必要があるかを説いています。
“Luxury’s Responsibility to Lead the ESG Transformation.” YouTube, www.youtube.com, 27 July 2022, https://www.youtube.com/watch?v=EBYcKQtUa5w.
フランス語の翻訳です。英語と違って上手く翻訳できず、すみません。
ローラン・ボワロ:
情熱を持って発信し、根気よく、持続的に発展させることです。
それがコルベール委員会の存在理由です。
コルベール委員会と113の会員の存在理由です。
私たちは古代1万8000年にわたるノウハウ、神聖さと人間らしさを携えているのです。 香水、衣服、そしてブドウの木は
神聖です。それは自然に依存しています。生物多様性にあります。
その取り組みは、私たちの責任であり、私たちの義務であり、未来の世代に住みやすい地球を保証するためです。
一例を挙げたいと思います。
私が世界銀行で生物多様性に関わる取り組みを行った事例を紹介したいと思います。フォーラムには、業界全体と利害関係者
を集め、より持続可能なブドウ栽培のための解決策を考えるためです。持続可能な社会を実現するためにサステイナブルな未
来を目指します。
アグロフォレストリー(※)のように農業と林業を意図的に組み合わせることで、主食作物の収量の大幅な向上、収入創出に
よる農家の生活向上、生物多様性の増加、土壌構造の改善と健康状態の改善、浸食の減少、炭素隔離など、さまざまなメリッ
トが得られるのです。
※アグロフォレストリーは、農業(Agriculture)と林業(Forestry)を組み合わせた造語。 作物や牧草地の周りや間に樹木や低木を植え
る土地利用管理システム。樹木は、果実やナッツ、医薬品、木材製品など、有用かつ市場性のあるさまざまな製品を生み出す。
4.コルベール委員会(フランスに拠点を置く大手高級ブランドの協会)
会員企業
A
Alain Ducasse, Anne-Sophie Pic, Atelier Mériguet-Carrère
B
Balenciaga(バレンシアガ), Balmain, Baumanière Les Baux de Provence, Bäumer – Place Vendôme,
Berluti, Baccarat(バカラ), Bernardaud, Bonpoint, Boucheron, Breguet
C
Cartier(カルティエ), Celine(セリーヌ), Chanel(シャネル), Chloé, Christian Dior Couture(クリスチャン・デ
ィオール・クチュール), Christofle, Cognac Rémy Martin(コニャック・レミーマルタン), Christian Louboutin,
Champagne Ruinart, Champagne Bollinger, Champagne Charles Heidsieck, Champagne Krug,
Champagne Perrier-Jouët, Champagne Veuve Clicquot Ponsardin, Château Cheval Blanc,
Château d’Estoublon, Château Lafite Rothschild, Château d’Yquem, Cheval Blanc Courchevel
D
Dalloyau, Delamain, Delisle, Devialet, Diane de Selliers
E
Éditions de Parfums Frédéric Malle, Ercuis, Eres
F
Faïencerie de Gien, Féau Boiseries, Flammarion Beaux Livres
G
George V, Givenchy, GuerlainGuy Savoy
H
Hennessy(ヘネシー), Henri Selmer Paris, Hermès, Hôtel du Palais, Hôtel Plaza Athénée
J
Jeanne Lanvin, Joël Robuchon, John Lobb
L
Lacoste, LancômeLe Bristol, La Maison du ChocolatLe Meurice, Lenôtre, Leonard, Les Airelles
Courchevel, Les Prés d’Eugénie, Liaigre, Longchamp, Louis Vuitton(ルイヴィトン)
M
Maison Francis Kurkdjian, Martell, Mellerio
P
Parfums Caron, Parfums ChanelParfums Christian Dior, Parfums Givenchy, Parfums Hermès,
Patou, Pierre Frey, Pierre Hardy, Pierre Hermé, Potel et Chabot, Puiforcat
R
Ritz Paris, Robert Haviland & C. Parlon, Rochas
S
Saint Laurent, Saint-Louis, S.T. Dupont
T
Taillevent
V
Van Cleef & Arpels
Y
Yannick Alléno, Yves Delorme, Yves Saint Laurent Beauté
文化機関
A
Académie de France à Rome – Villa Médicis(ローマ・フランス学士院 – ヴィラ・メディチ), Air France(エール
フランス)
C
Château de Fontainebleau(フォンテーヌブロー城), Château de Versailles(ベルサイユ宮殿), Comédie-
Française
I
Institut de France(フランス研究所), IRCAM
L
Le Centre Pompidou(ポンピドゥー・センター), La Demeure historique, La Monnaie de Paris, La
Sorbonne(ソルボンヌ大学)
M
MAD, Mobilier National, Musée d’Orsay(オルセー美術館), Musée du Louvre(ルーブル美術館)
O
Opéra National de Paris(パリ国立オペラ座)
S
Sèvres – Manufacture et Musée Nationaux